大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)3819号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人山本の弁護人中山淳太郎の上告趣意について。

論旨は原判決の事実誤認を主張するものであって、刑訴四〇五条の適法の上告理由に当らない。

同被告人の弁護人原定夫の上告趣意について。

論旨は単なる法令の違反及び事実の誤認を主張するものであって刑訴四〇五条の適法の上告理由に当らない。(第一審判決の判示事実によれば被告人山本は同名越と詐欺をすることを共謀した上、名越において寸検表と題する書面に虚偽の記載をしてこれを会社係員植月武市に提出報告し、同人をして山林全部の立木実数は二四九六本位であるのを三四五三本位あるものと誤信させたのであり、このとき詐欺罪の着手があったものと解されるのであるから、所論のごとき法令違反は存しない。)

被告人名越の弁護人山崎季治の上告趣意について。

論旨は高等裁判所の判例違反を主張するけれども、この判例は本件には適切でなく、要するに原判決の法令違反を主張するに帰するから適法の上告理由にあたらない。(本件起訴状によれば検察官は被告人名越に対する訴因を背任とし、罰条として刑法第二四七条を掲げたけれども、第一審第一回公判において、同被告人に対する訴因を詐欺、罰条を刑法二四六条とそれぞれ変更し、その後第一審第二回公判において更に右の訴因罰条を起訴状のとおりに変更することを請求し、弁護人はこれについて被告人名越の所為は詐欺であっても背任ではないと異議を述べたが、第一審は検察官の右変更請求を許しその請求のとおり訴因と罰条が変更されたことは記録上明らかである。そして第一審判決は背任の事実を認定し、これに対して背任罪の規定を適用しているのであるが、他人の委託によりその事務を処理する者が、その事務処理上任務に背き本人に対し欺罔行為を行い同人を錯誤に陥れ、よって財物を交付せしめた場合には詐欺罪を構成し、たとい背任罪の成立要件を具備する場合でも別に背任罪を構成するものではないと解すべきであるから、第一審判決が本件起訴状に基いて背任の事実を認定しこれに対して背任罪の規定を適用してもそれは詐欺の事実が確定されているものといわねばならない。従って第一審判決は詐欺の事実を認定しながら背任の法条を適用した誤があるものといわねばならないから原審が第一審判決を破棄した上適条の誤を正したのは正当であり、右のような場合には訴因の変更を必要とするものではない。)

なお本件については刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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